仕事と介護の両立は『まず発信することから』で解決が見えてくる

自然体で足のマッサージをしている姿が何ともほのぼのなひと時でした

自然体で足のマッサージをしている姿が何ともほのぼのなひと時でした

地下鉄を降りて徒歩5分程度、隅田川のほとりにあるキレイなマンションに訪問させていただき、仕事をしながら奥様を介護している長澤達朗さん(35歳)にインタビューさせていただきました。

長澤さんが「やっちゃん」と呼ぶ奥様のヤスコさんは窓側の桜並木が見える日当たりの良い場所で介護用ベッドに寝てらっしゃいました。今は要介護5で、生活の多くをベッドの上で過ごされています。軽く自己紹介と挨拶した後、お二人の出会いについて聞くと「合コンです」と答えた長澤さん。それを聞いてこの日一番の大笑いを見せてくださった奥様。切羽詰まった在宅介護をしている自宅とは異なる、さわやかな空気の流れる空間が心地よく、つい長居をしてしまいました。
「すみません。旦那さんを少しお借りします」とお声かけして、場所を近くのカフェに移し、お話を伺わせていただきました。

介護が始まったのは3年前。妻の体調が思わしくなく転んだりしていて「どうもおかしい」と思い受診したところ、小脳に萎縮があり「多系統萎縮症」と診断されました。このとき「こんなに早く病気になってしまうなんて、、、」と思い、病気のことを知るにつれ、妻の『死』というものを意識し、悲しみが襲ってきました。当時は、これからどうなってしまうのか、どう解決したらいいのか、まったく思い浮かびませんでした。突然、妻の介護がはじまり、症状が進行していく中で、介護や家事の時間が徐々に増えていき「仕事を辞めなきゃならないのか、、、」と考えるようになりました。

そんな中で、ヤスコさんを支える介護サービス事業者やケアマネージャーが集まる「担当者会議」が開かれることになりました。自分の中でいろいろ思い悩んだ結果、「障害年金だけでは今の生活を維持することはできないし、妻によりよい生活をしてもらうためにも、十分な収入が必要だ。だから、仕事は辞められない。」という結論に至りました。そして、担当者会議では「どうしても自分が働かなくてはならい。恥ずかしながら、そうなると妻の介護は皆さんの力を借りないとできません。お願いします。」と言って、日中の介護を専門家に任せることにしました。

今利用しているサービスは食事や掃除をしてくれる訪問介護(ヘルパーさん)、寝たまま入ることができる特殊浴槽を持ち込んだ訪問入浴、皮膚トラブルのチェックや排便コントロールをしてくれる訪問看護、医師による訪問診療、介護用電動ベッドと車椅子の福祉用具レンタルを利用しています。2月には初めて診療所に短期入所するサービスを利用しました。このときは普段やれないことをやろう!と意気込み過ぎて逆に疲れてしまったので、次回の5月の時には、ゆっくり過ごしたいと思っています。

仕事と介護を両立する環境を整えるため、勤務している会社にも奥様の病気のこと、介護が必要なことを伝えました。「この先、家族の介護のために働けなくなる可能性があることを伝えることはサラリーマンにとっては大きなリスク」と感じながらも、会社に言わなければ、今の生活は回せないと考えました。人事部に仲のいい方がいて相談しやすかったということもあって、会社に妻の介護のことを伝える決心をしました。上司をはじめとして会社も理解を示してくれて、仕事の量を配慮してくれるようになったり、サポートをしてくれる人をつけてくれたりしました。

他にも両立の環境整備として、仕事と介護を両立するために、思い切って引っ越しをしました。通勤時間がドアtoドアで30分で、何か緊急のことがあってもすぐに帰宅できる立地、そして、掃除などの家事の負担を軽減するため、これまでより狭いマンションを見つけて転居しました。また、難病の申請をして医療費の補助も受けました。

今の生活の中で辛いことは、妻の病状の変化に対応していくことです。病気が進行するという事実も辛いですし、変化に合わせて介護サービスなど検討して調整するのも大変です。こういう時にどうしても妻とのケンカが増えてしまいます。今から思うと、自分のやるべき仕事や介護でうまくいかないことがあって、自分の気持ちに余裕が無くなると妻とケンカになってしまうのだと思います。気持ちに余裕をもって、穏やかに日々を過ごすためにも、ケアマネさんや会社に自分の状況を発信することは、本当に大切だと思っています。テレビで虐待や心中のニュースを見ますが、本当に紙一重だと思います。

自分の会社でも、育児のことは当事者たちがプロジェクトを立ち上げて取組みを始めていますが、介護についてはこれからのようです。介護を経験している私が会社の中で発信して、介護支援のプロジェクトを立ち上げられたらと思っています。まずは自分にできることから始めていきたいと思っています。

【インタビューを終えて】
実は、長澤さんは私と同じ年で、年上の妻と結婚したという点でも共通しており、勝手に親近感を持ちながらインタビューをさせていただきました。これまで悩みながらも、一人で抱え込まず介護すると決めて、仕事をしっかりすることこそが、妻のためになるという気持ちを明確にされてきた長澤さんの力強さと愛情の深さは、同年齢でありながら圧倒されてしまいました。介護を発信することが大切、というメッセージは、このインタビュー記事やセミナーでしっかり伝えさせていただきます!もし勤務されている会社で介護のプロジェクトを立ち上げる時はぜひ協力させてください!全力でサポートさせていただきます!

インタビュアー:NPO法人となりのかいご・川内潤

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