2020.12.09

「階段で背中を押されても仕方ない」ほど恨まれる仕事から、喜ばれる仕事へ

2020.12.09

「階段で背中を押されても仕方ない」ほど恨まれる仕事から、喜ばれる仕事へ

日常ではなかなか接点がない「介護」をより身近に感じていただけるよう、私が外資系コンサル会社を辞めて、介護職を選んだ時のお話をさせてください。

●解雇するほど、自分の評価が上がる
介護の仕事に関わる前は、外資系コンサル会社で“企業再生”という業務を担当。特に大変だったのは、余剰人員の整理(リストラ)でした。「子どもが大学を出るまでは…」「親に介護が必要で…」と、自身の親のような年齢の社員が、20代の私に涙ながら訴えても容赦なく解雇通告をしていく。その対応が迅速であるほど「グッジョブ」と上司から褒められていました。

●給料が大幅ダウンしても…
大学で社会福祉を学び、インターンとして働いたIT企業で、ITと介護を連携させた新規事業が好評価を得ました。その後、自分の力を試すべく外資系コンサル会社に転職。しかし、先に述べた業務で自分の心が追い込まれ退社。それまでとは真逆の「喜ばれる仕事」を探し、両親が立ち上げた“訪問入浴”の仕事に就いたのです。

●誰からも評価されなくても…
訪問入浴のご利用者は、ほとんどが寝たきりの人たち。「この状態では病院の方がいいのでは?」と思われる方ばかりでした。でも、彼らには、それぞれに家にいる意味がある。それを理解し、笑顔を引き出すことに大きな喜びを得ていきました。多くの「介護職」は、たとえ誰からも評価されなくても、この“喜び”のために日々の仕事をしているのだと思います。

●「介護職」とは
介護の仕事は“費用対効果”は低いかもしれません。ただ、私にとっては、人の喜びを間近で触れることができるという点で、“仕事内容の価値”を非常に強く感じました。要介護になっても、その人が望んでいることを試行錯誤や創意工夫をしながらでプロとして応える。介護が必要な本人だけでなく、周囲の家族まで笑顔になっていくことに価値を見出す仕事が「介護職」だと思っています。また、サポートを通じて“さまざまな人の生き方を間近で学ばせていただける”のも「介護職」の醍醐味かもしれません。

●現場で学んだことを、社会に還元したい
「介護職」の経験から、距離感が近い身内を介護することの難しさを知りました。相手を大切に思うからこそ、「掛ける声が大きくなる」「支える手元が荒くなる」など、時に不適切な関わりになってしまうことを防ぐため、働く世代の方々に介護の実態をお伝えし、適切な距離の取り方を一緒に考えることが、私の仕事となりました。