2021.07.21

親の介護経験が、自身の老後不安を和らげる

2021.07.21

親の介護経験が、自身の老後不安を和らげる

 介護セミナーのアンケートで「親の老後や介護が心配だが、自身の老後も不安」といったコメントをいただくことがあります。そこで、自身の老後の考え方について、お伝えしていきたいと思います。

●2000万円あれば、老後は安心?!
 金融庁の報告書が発端となり「老後2000万円問題」が話題となりました。確かに、お金は無いよりあった方が良いしょう。ですが、「“お金さえあれば老後は安泰”ではない」ということが介護職としての経験や年間400件以上の介護相談を受ける中で、確信に変わってきました。

●あなたが、親が、「これさえしていれば楽しい」と思えることは?
忙しい日々の中で「これさえしていれば楽しい」と考える機会は、なかなかないかもしれません。また「あなたの親は何をしているときが楽しいのでしょうか?」という質問に「恐らく〇〇では?」と、ズバリ答えられた方は、親が要介護状態になっても、家族や介護職が一丸となり本人の想いを大切にした支援体制作りができているようです。このことから「何をしている時が楽しいか」を自識して、支援する側と共有できていることが重要だと、多くの高齢者の生活に触れて、学ぶことができました。

●高齢者の支援をする中で老後の不安が下がった
 私も以前は「自身の老後」に不安しかありませんでした。ただ、お金がなくても、病を患ったとしても「これさえしていれば楽しい」という自分らしい生き方を知っていれば、幸せな老後が過ごせるのだと、自身の老後への不安が薄れていきました。
 現時点で私にとっての「これさえしていれば楽しい」は、まだ漠然としていますが「誰かに喜んでもらうこと」です。大変ありがたいことに、今の仕事と楽しいことが直結していますが、この仕事ができなくなっても「誰かに喜んでもらえる」ような過ごし方ができればよい、と考えられるようになりました。

●改めて「お金を貯める=老後の不安を埋める」ことなのか?
 公的サポートをうまく活用して、慣れ親しんだ自宅で、穏やかに一人暮らしをする方も少なくありません。
 「高額な老人ホームに入居すれば幸せだろう」と思考停止するのではなく、親の介護について「身体が動かなくなっても、記憶力が低下しても、楽しいことは何だろう」といった視点を持つことは、質の高い支援体制を構築するだけでなく、自身の老後を考える意味でも、非常に有益な向き合い方となります。