2022.05.05

家族の延命治療を話し合う適切なタイミングとは?

2022.05.05

家族の延命治療を話し合う適切なタイミングとは?

 ビジネスパーソンからの介護相談で「いざという時のために、親と延命治療について話し合いたいのですが、どんなタイミングがよいのでしょうか」「親の気持ちを考えて、延命は避けた方が良いのでしょうか」というものがありました。
そこで、延命治療に関わる相談事例から“話し合う適切なタイミング”についてお話しさせていただきます。

●一家の大黒柱だった父の急展開から
 Aさんの父親は、働き者で家族を大切にし、経済面と精神面の両方で一家を支えてきました。70代半ばで仕事を退職し、趣味のゴルフや映画鑑賞など、セカンドライフを楽しんでいました。そんなある日、自宅で脳出血を起こし救急搬送されました。一命をとりとめるも、医師からは「非常に厳しい状況ですので、延命治療について、ご家族で話し合って決めてください」と言われ、動揺したAさんから、病院の電話コーナーからリモート介護相談のご要望をいただきました。

●本人と家族の想いを分けて考える
 私はAさんの感情を受け止めつつ、次のような質問をしました。

「お父様はどんな方ですか」
「印象に残る思い出はありますか」

質問の意図が飲み込めないながらも、父親ついて語るAさんは、とてもいい表情をして父親との思い出などを語ってくれました。私は「そのようなお父様だったら、どんな判断をするか、考えることが大切ですよね」と、父親とご家族の想いを分けて考えるように、促していきました。
その後、Aさんは母親とともに、父親の想いを想像しながら「家族思いの父なら私たちに負担をかけるような、延命は望まないだろう」という決断を導き出していました。

●延命治療の可否は想いを実現するツールの一つ
 本人の望む延命治療を考える機会づくりとして、最近では「ACP:アドバンス・ケア・プランニング」や「人生会議」という言葉のもと、国も普及啓発活動をしています。ただ、どうやって切り出したらいいのか、と考えるうちに何も話ができない方が殆どではないかと思います。
 いきなり「人生会議」といっても重たい話になってしまうので、次のような互いの生活に対する想いを意見交換することから始めてみてはいかがでしょうか。

「自分はここから10年は〇〇を大切にして生活していきたいと思っているけど、父さんはどう思っている?」

さらに話を深めていくツールの一つとして、延命治療の話題にも触れていただくのが自然な流れかと思います。このプロセスの途中で急展開があっても、Aさんのケースのように本人の想いを大切にした意思決定をすることもできます。大切なのは延命治療の方法を決めることではなく、親の生活に対する想いを知ることです。どうか焦らず対話を繰り返してみてください。
親が元気なうちに自分の将来の話とともに、家族でのよりよい対話の進めてみてください。