2023.07.12

親を思う気持ちがヤングケアラーを生み出す

2023.07.12

親を思う気持ちがヤングケアラーを生み出す

 「ヤングケアラー」という言葉をよく耳にするようになってきましたが、まだまだ広く理解と認知はされているとは思えません。
当法人となりのかいごでは、高齢者の介護に関わるヤングケアラーがいる家庭といない家庭の意識調査を行い、『ヤングケアラー白書』(ヤングケアラー白書-団塊の世代が要介護状態になる前に)としてまとめました。今回はその調査結果から浮かび上がった問題点をお伝えします。

●ヤングケアラーとは
 一般社団法人ケアラー連盟によると…
「ヤングケアラー」とは、家族にケアを要する人がいる場合に、大人が担うようなケア責任を引き受け、家事や家族の世話、介護、感情面のサポートを行なっている、18歳未満の子どものこと
と定義されております。

家族の介護を子どもが担っているため、学校生活に支障を来す場合があります。中高生のクラスの中に1人以上のヤングケアラーがいるというのが現状です。私の知る限り最少年齢は6歳でした。

●ヤングケアラーが生まれる背景
 家族の負担を軽減し、社会全体で介護を支えようと2000年に介護保険制度が創設されました。それから23年が経過しても、親の介護は子どもや家族が担うものという考え方は、根本的には変わっていないように感じます。

 独自調査の結果でも、ヤングケアラーのいる家庭のほうが、そうでない家庭に比べて「介護は家族の手で行うのが望ましい」「要介護者が望むなら家族の手で介護すべき」と考えています。
ヤングケアラーの有無に関わらず、「介護を自分の手で行うことは親孝行になる」と考える人は60%以上でした。家庭の中だけで介護をするという抱え込みの意識こそが大きな問題だと考えています。

●ヤングケアラーの問題点
 ヤングケアラーのいる家庭では、「介護に関わることは子どもの教育にとっても有効である」と考える傾向があります。要介護者との関係性で、孫からの声がけのほうが聞く耳をもってくれるなど、いい側面もあるかもしれません。介護を担うヤングケアラーも、褒めてもらえる、頼りにされて嬉しい気持ちなります。ただ気が付いたときにはお手伝いという枠を飛び越えて、いつの間にかヤングケアラーになってしまっているのです。
度を超えた介護への関わりは子どもが子どもとして過ごす大切な時間を奪います。学校生活に支障が出ると、子どもの孤立につながります。介護は本人が頑張っても、なかなか成果や自信を生み出せるものではありません。そのため、ヤングケアラーとして育った子どもは、自己肯定感が低いことも挙げられています。
ヤングケアラーの子どもたちは、誰もが優しくていい子です。故に自ら不満を声に出すことや相談窓口へ行くことが少なく、外側からの支援や理解が得られづらいのです。

●子どもをヤングケアラーにしないためには
 まだ子どもが小さく、親の介護は先のことだと思っているときから、自分の子どもがヤングケアラーになる可能性があるということをイメージしていただきたいです。
周りにヤングケアラーがいるのではないかと気にかけることも、子どもたちを守ることにつながります。ヤングケアラーになってからの支援はとても難しいのが現状です。介護に関わることが当たり前となり、それがその子の大切な居場所になっていることもあるからです。
私たち大人は、未来ある子どもをヤングケアラーにしないために何をしたらいいいのかを考え、彼らに気づけるフィルターを持つことが重要だと考えています。