2023.09.13
老々介護の実家を上手にサポートする方法
2023.09.13
芸能で有名な方が一家心中をはかったことがメディアを騒がせていますが、この背景に老々介護もあったと報道されています。企業での介護相談でも「自分の両親は大丈夫でしょうか」と不安を打ち明ける方もいらっしゃいます。今回は老々介護の現状と事例から、そのサポート方法について考えてみたいと思います。
●老々介護の現状
厚生労働省の「国民生活基礎調査」によれば、
・2022年の高齢者世帯数は約1,693万世帯で、全世帯の3割を初めて超え、過去最多
・自宅介護のうち介護する側・される側の双方が65歳以上の老々介護となっている割合は63.5%で初めて6割を超えた
支える側も高齢であると、社会制度との接点が持つのが難しく介護サービス利用ができない、介護する側の体力低下から共倒れとなるリスクが高い、などの課題が考えられます。
●老々介護の相談事例
【相談者のAさん】
・片道2時間の場所に実家
・70代後半の父親は脳梗塞による後遺症で右半身マヒとなり要介護2の認定
・70代後半の母親が介護を担う
・母親は自身の父母や義父を20年家族介護した経験がある
・母親は自身の介護にプライドがあり、父親が要介護2の認定を受けながらも介護用電動ベッドと外出用車いすのレンタルしか使ってない
・ホームヘルパーやデイサービスに頼らず、父親の介護を母親が一手に引き受けている
Aさんは帰省した際に疲れている母親の様子が心配になり、私の介護相談を申し込んでくださいました。
●献身的介護によるある課題
Aさんの相談を聞いて、家族の介護をすることそのものが母親の居場所となっており「これ以上は自分ではできない」と判断できない“共依存”の状況に陥っているのではないかと考えました。
●離れて暮らす家族ができるサポート
Aさんのケースだと、離れて暮らす家族からの“援護射撃”が必要です。
【Aさんのやるべきこと】
・Aさんがケアマネジャーとつながり、母親が介護サービス利用を拒否している様子など現状把握を進める(母親の持病などを伝えることも有効)
・母親の愚痴の聞き役を担い、可能な範囲で電話して「最近どう?」と聞く
→最初は気のない返事でも、そのうち「食べこぼしが増えて片付けるのが大変よ」など、介護の大変さを口にするようになる
・介護の大変さをそのままケアマネジャーへ“情報の横流し”
・情報をもとに、ケアマネジャーが「父親の身体のメンテナンスのために通いのリハビリセンターを利用しませんか」など繰り返し声をかけてもらう
母親は「しつこいから仕方ないわね」とデイサービスの利用を受け入れました。母親が「コーラスに、また通うことにしたわ」とおっしゃっており、Aさんはひと安心していました。
懸命に介護することは、家族を想う気持ちの表れであり、大変素晴らしいことだと思います。ただ、その末に家族関係が壊れてしまい、時に悲しい事件に発展することは、あってはならないのです。