2023.11.22

よりよい介護のために「まず、自分の生活を大切にする」

2023.11.22

よりよい介護のために「まず、自分の生活を大切にする」

「介護が必要な家族の希望を叶える」「なるべく多くの時間を使い支える」「十分な介護費用の工面」など、「自分の生活」より介護を優先すると、苦しい介護状態になってしまいます。今回はよりよい介護をする上で最も大切に考えていただきたい「自分自身の生活をたいせつにする」ことの意義についてお伝えします。

●辛さにフォーカスしない関係を
 介護の場面では、要介護者が辛い立場にいることは容易に想像できます。身体的な不自由や、認知機能の低下を伴う認知症のようにコントロールできない現象が起きるからです。
それゆえ、
「要介護の家族の辛さを理解して軽減できるよう、自分を犠牲にするのは当たり前」
「介護する方も大変なのだから、少しぐらい横柄な態度を取られることは仕方がない」
と考える方がいますが、いずれも要介護者と支える側が対立構造になってしまっています。家族関係の中で対立が続き、苦しみが生まれるのは不自然なことだと冷静に考えたら分かります。お互いが良好な関係を築けてこそ、穏やかで継続性のある介護体制が生まれます。

●家族介護をやりがいにしない
 「介護は大変」というイメージから、親の介護に関わると「やりがい」「使命感」「親孝行」という気持ちを満たそうとします。
ただ、大切な親を心から支えたいと思っても、同じモチベーションが長続きすることは決してありません。介護というのは改善していくものではなく、達成感が得られにくいからです。

老いていく親にジレンマを抱きイライラして、つい強い言葉を投げつけてしまったり、時には手を出てしまうような悲しい状況にもなりかねません。
そして介護に頑張って向き合った分だけ、見送った後の後悔や喪失感は強くなり、介護ロスや介護うつと呼ばれる症状に苦しむ方も多いのが現実です。

●余裕をもつための距離感
 介護はプロに任せていただきたいとお伝えしているのは、親との適度な距離感を保つためでもあります。離れて暮らし、年に数回しか会わない親との関係が良好であれば、それがベストな距離感と言えます。

親との距離が近くなるほど不安や心配は加速して行きます。そうなると気持ちに余裕を持てなくなり、優しく接することができなくなります。離れていることで築けた良好な関係が、介護により距離を縮めることで壊れてしまうことがあります。

●介護の目標を変える
 介護においては、「親のために一生懸命頑張る」ではなく「自分の生活を犠牲にせず、最後の日まで親との関係を良好に保つこと」を目標としていただきたいのです。それにより、感情がストレートにやり取りされやすい家族の間で余裕が生まれ優しく接することができるのです。
介護に直接関わらない後ろめたさや不安が湧き上がってきても、適度な距離感は必要です。このような感情と上手に付き合っていくことも、介護のひとつなのかもしれません。

今はまだ介護が必要でなくても、親の住む地域の地域包括支援センターへ「まだ元気ですが、介護が必要になったらどんなサポートが受けられるのか」と相談することをお勧めします。いざという時のための相談先が確保されることで、不安がかなり低減するでしょう。