2024.01.24

【認知症の誤解、その2】認知症が進行しないために、できるだけ話しかける

2024.01.24

【認知症の誤解、その2】認知症が進行しないために、できるだけ話しかける

認知症の「誤解、その2」として「認知症が進行しないために、できるだけ話しかける」について、実際の事例を元にどのような対応が必要なのかをお伝えします。

●認知症の父親と上手く会話ができない
 Bさんの70代後半の父親は定年後から少しずつ物忘れがひどくなり認知症と診断され、一緒に暮らす母親が介護をしていました。母親は認知症が進行しないようにと、「今日は何月何日か」「食べたご飯のこと」など毎日色々なことを話しかけるようにしています。

しかし、「そんな事をなんで聞くんだ!」と父親から怒鳴られます。母親は「お父さんのために、話しかけているんだけど…」と納得が行かない様子でした。時には、母親も売り言葉に買い言葉になって、ケンカしまうこともあるようです。また父親から「もう通勤する必要のない会社の話」「食べたはずのご飯の催促」をされると心配が増すと言います。

 Bさんも、父の様子が気になり実家へ帰省する回数を増やしました。父親の認知症が進行しないように「孫の名前は?」「何歳になったか覚えている?」などなるべく声を掛けるようにしました。ところが父親はBさんにもイライラした態度を取るため、喧嘩の仲裁をしたかったはずがかえって父親を激怒させる結果になってしまいました。母親も、Bさんも、普通に会話のできない父親と話をすることに疲れてしまいました。

●進行予防のための会話には技術が必要
認知症の本などには関わる基本姿勢として、相手を否定しない・落ち着いて関わる・相手が安心して話せる話題を続けるなどと書かれていますが、これは簡単にできることではありません。日常的に何度も同じ話をされると、始めは優しい声掛けができていても、余裕がない時はつい否定してしまったり、強い言い方になってしまいます。一見簡単そうな「会話」にも認知症の方への対応には、工夫や技術が必要です。

Bさんの父親が母親やBさんにイライラしてしまうのは、聞かれたことが時として尋問のように感じてしまうことがあるからです。思い出そうと頑張っても、全く思い出せないことが本人も辛く悔しいはずです。自分自身の変化を簡単には受け入れ難く、長年仕事でキャリアを築いてきた方なら尚更です。一方で、家族は忘れて欲しくない、今までと変わらないでいてほしいという思いが強くなり、出来なくなった事を攻めるような物言いになってしまうのです。 

●認知症の親とその家族の上手な2つの関わり方
・進行予防のための会話とコミュニケーションはプロに任せる
どんな人でも日によってコンディションは変わるものです。それを見極めながら、その時のふとした表情の変化などを観察しつつ、話題を変えたり、興味のある会話へと持っていく。これはトレーニングや研修を重ねてこそ培われる技術です。私自身も緊張することなく自然に会話ができるまで3年ほどかかりましたし、自分の家族には穏やかな口調で話すということは難しいと思っています。近い存在の家族だからこそ誰もが感情的になりやすいので、お互いが穏やかな関係でいるためにも、進行予防のための会話を家族が頑張る必要はありません。

・自分自身が余裕を持てる会話の頻度に調整する
認知症予防のためにたくさん話し掛けたり、心配だからとずっと側で見守ろうと頑張らなくていいのです。何度も同じ事を聞かれて辛くなってしまう場合は、物理的に接触する頻度を減らす事をおすすめします。

 認知症の家族に、継続性のある穏やかなケアを届けるためにも、デイサービス、ホームヘルパーのサポートを利用しましょう。会話を重ねることが、お互いの不安を加速させてしまっている状況は決して良好な関係と言えません。家族が全てなんとかしようと思わなくて良いのです。ご自分がストレスを溜めないような関わり方をすると心に余裕ができ、家族との円滑な関係を築くことができます。