2024.03.06

【認知症の誤解、その4】とにかく病院を受診させる

2024.03.06

【認知症の誤解、その4】とにかく病院を受診させる

 「認知症の誤解、その4」として「とにかく病院を受診させる」について事例を交え、どのような対応方法があるのかをお伝えしたいと思います。

●母親が心配で病院へ連れて行きたい
Aさんが地方で暮らす70代半ばの両親のもとへ帰省すると、母親の様子が気になりました。母親は元々おっちょこちょいな性格で、自転車で買い物に行ったのに自転車を置いて帰ってきたり、同じ物を何個も買ってきてしまうことがありました。それでも、父親は「またか」と呆れる程度で済んでいました。

ところが、以前なら朝から身なりを整えていたはずの母親が、一日中寝間着姿で過ごしていたり、同じ話を繰り返します。父親から「お母さんは色々忘れてしまうから家事は自分がやっている」と言われ、今までの物忘れとは明らかに違う様子が心配になりました。

母親の状況をインターネットで調べると、認知症の疑いが増すばかり。医師の診断に基づいた適切な処置を母親に受けてもらいたくて、病院での検査を打診するも「なんで検査をする必要があるの?」と拒否。介護申請の必要性も想像できるため、一刻も早く病院へ行って欲しいと母親への説得にも力が入ります。

 Aさんは事あるごとに母親に病院へ行くようお願いしても、頑なに拒否されました。父親からは母親の困った行動について連絡が入り、心配が増すばかり。穏やかな父親も、強い物言いになり母親と喧嘩になってしまうことも増えてきました。

ある日、Aさんは母親を買い物に誘い出し、そのまま病院へ。病院へ連れて来られた母親は車から降りず、結局受診は出来ませんでした。Aさんはどうしたら病院へ行ってくれるのか途方に暮れてしまいました。

●無理やり病院へ連れて行く必要はない
 家族の変化を目の当たりにした場合、多くの方が「まず病院を受診させよう」と専門家の意見を聞いてどのような対処が必要か知りたいと思うのは当然の行動です。

ですが、当事者の立場を想像していただきたいのです。認知症を発症した場合、本人も自分の変化に気づいていても、その変化を受け入れることに不安や恐怖があります。一方で、「忘れたという記憶そのものを忘れる」という特徴もあるため、「私は大丈夫」という気持ちも本心なのです。認知症の当事者はこの二つの感情の中で葛藤しているということを支える側は知っておいてください。

 強引に病院へ連れて行く方もいますが、連れて行かれた方は家族に対しての不信感が強くなり、その後の関係性に支障が出ます。薬や介護サービスの拒否など、不信感から家族の言葉に耳を貸さなくなることも。家族関係が壊れるような手段は得策ではありません。拒絶が強い場合は、一旦様子をみて、時間をかけながら冷静に対策を考える必要があります。

介護申請のために専門の病院での診断が必要だと考える方もいますが、近所のかかりつけのクリニックで「かかりつけ医の意見書」を書いてもらうことで、介護申請することも可能です。

 Aさんのようなケースでは、母親の異変を感じたタイミングで地域包括支援センターへの相談をお勧めします。家族の現在の状況や、困り事を詳細に伝え、助言を仰ぎましょう。かかりつけ医の協力や、近所の知り合いに手助けしてもらいスムーズに受診ができたケースもあります。

認知症の早期発見、早期治療も重要ですが、本人を混乱させたり不安にさせては意味がありません。家族や身近な人が認知症であることを受け入れることで、穏やかに暮らしている方も大勢いらっしゃいます。認知症は感情に紐づく記憶は残りやすいため、無理に病院へ連れていくと「嫌がることを無理にさせられた」という不信感だけが強くなってしまいます。

レカネマブなど新薬が開発されていますが、今はまだ、認知症を治す薬はありません。だからこそ、本人が幸せに穏やかに暮らすため、支える家族が過度な負担を抱えることなく、継続性のある関わりは何かを考えていただきたいです。