2025.07.16

施設に入居している家族とのコミュニケーションの取り方

2025.07.16

施設に入居している家族とのコミュニケーションの取り方

 親が施設や老人ホームに入居した場合、面会や電話で近況を伝え合うといった方法でコミュニケーションを取るようになると思います。
そこでは「どんな風に過ごしているのか」「元気でいるのか」など、いつも同じような会話しかしていないことに気づくかもしれません。
「本当にこんな会話ばかりでいいのか」と悩まれる方もいるでしょう。そこで「老人ホームに入居している家族とのコミュニケーションの取り方」について、家族としての心構えや関わり方のコツなどをお伝えします。

●心地よく関われるペースを大切にする
 親の老人ホームへの入居を決めた理由は様々だと思いますが、「親の介護は子が担うもの」といった日本の風習の中で育っていると、支えてきた家族としては親を施設へ入居させることに、どこか後ろめたさを持たれる方も多いようです。
施設に入居している親に対して家族として何かしてあげたいと考えて、面会や電話の回数を増やそうと頑張ってしまいがちです。たとえ親から「寂しいから頻繁に来てほしい」と言われても、優先するべきは自身の生活です。要望に応えすぎて無理をした結果、施設から足が遠のいてしまうくらいならば、気持ちよく無理のないペースで接することをお勧めします。
遠方の施設では頻繁に会いに行くことは難しいため、電話での会話が多くなりますが、同じような会話になったり、話が噛み合わないと電話することが辛くなるケースもあります。電話も自分自身が、気持ちよく話せるペースを心掛けましょう。

●負担なくできる範囲で十分な理由
 親との会話で、「ご飯を食べてる?」「今日は何をしていたの?」「何か困っていることはない?」と同じようなことを聞いてばかりで会話が弾まないこともあります。親もすぐに答えられなかったり、あまり元気がないと心配になることもあるでしょう。そもそも、家族の会話に特別な意味や目的を持たせる必要はないと考えています。その時お互いが言いたいことを伝えられたらそれで十分です。
親との会話に悩むという事自体が、親のことを考えられる余裕があるという証拠で、とても良い状態とも言えます。考えられる時間と余裕を持つことこそが親との適切な距離感なのです。同じ会話の繰り返しでも、盛り上がらなくても全く問題ありません。離れて暮らす親を心配に思う気持ちがあるだけで十分に親に対して真摯に向き合っているといえるので、自分を責める必要はありません。
その上でもし可能であれば、家族共有の思い出話や、両親がしてくれた昔のエピソードなど、家族だけにしか出来ない会話を織り交ぜてみましょう。認知症の短期記憶障害は、数分前に起きたことなど直近の記憶を忘れてしまいます。施設での生活については、聞いたことにすぐ答えられなかったり、話の辻褄が合わないことで不安にさせてはいけません。
施設の生活に心配があれば、介護記録を見せてもらえば良いので、親との会話は昔話を中心にした方よいでしょう。昔の記憶は鮮明に覚えていることもあります。また、今まで親からされて嬉しかったことや感謝の気持ちを伝えてもいいでしょう。家族にしかできない話題を考えてみてください。

●親と施設職員の関係を深めるきっかけづくり
 面会や電話の他にも、家族にしかできないことがあります。面会や電話で繰り返し話題になる昔話に関連した思い出の品や昔の写真を、部屋の中に飾ることをお勧めしています。
「この写真、○〇さんですか?」と親と施設スタッフの会話が弾むことで、個々の関係性が深まるきっかけにもなります。私も施設職員の時は、野球の往年の名選手の話で盛り上がったり、着物の着付けの仕方を教わったりすることもありました。こういった会話から関係性が深まり慣れ親しんだ関係となることは、日々のケアの質を高めることにもつながります。