2022.07.06

家族が明日倒れても、無理なく仕事を続ける方法とは?

2022.07.06

家族が明日倒れても、無理なく仕事を続ける方法とは?

 Aさんの事例を通して、早めの介護相談によってどのような効果が得られるのか、お伝えいたします。

●まだまだ元気な70代の両親
 Aさんは、私が企業で開催した介護セミナーに参加して「親が元気なうちからの相談が、むしろ良い効果が期待できると知り、思い切って申し込みました」と、私の個別相談を受けることにしました。

Aさんは東京、70代の両親は北海道在住。父親はシルバー人材センターを通して庭木の剪定の仕事をしており、母親は趣味活動で忙しくしています。両親宅近くに家族で住む妹と週1回ほどのLINEのやり取りで、両親は元気に過ごしている、と聞いていました。

●今後の介護リスクを知って予防策をはかる
 「今後の介護リスクを知り、今からできる準備を考えていきましょう」と、母が父を介護するケースでは、どのようなことが起きるか、を一緒に考えてみました。

・父が他人からの世話を拒否、母が介護で疲れ果ててしまう

・その様子を見た妹が小さな子どもを抱えながら、母の手伝いをしつつ「そろそろ、ヘルパーさんを呼ぼうよ」と伝えても「お父さんが嫌がっているし、私もまだ大丈夫だから」と強く拒否

・妹のストレスが溜まり、Aさんに「なぜ、お兄ちゃんは何もしてくれないの?」と強く訴える

・Aさんが北海道の実家でテレワークを始めるも、母が他人を頼らず介護を抱え込むことを止めることができず、どうしていいか途方に暮れる

さて、このような厳しい状況に追い込まれないために、どのような準備をしておけばよいのでしょうか?

・家族への直接介護は介護職であっても難しいと、その考え方を妹とシェア

・両親とは「これから10年はどんな風に過ごしたいか」という対話を繰り返し、生活に対する想いを理解しておく

・親が元気なうちから地域包括支援センターへ電話をしてつながりを持っておく

Aさんは、上記の3つのアドバイスを実施しながら、両親の生活を温かく見守ることにしました。

●急展開があっても父の想いを大切にできる
 数か月後、Aさんのお父様がケガをして緊急手術をすることに…

・父親が庭木剪定の作業中に脚立から落下、頭を強打して緊急手術

・一命はとりとめたものの、右半身にマヒが残り、リハビリでできる限りの回復を目指す

・父親はケガをしたショックもあり、リハビリに前向きになれず「退院したい」と繰り返し、母親も何とか自宅に帰してあげたい、と考える

・Aさんは、すぐに地域包括支援センターに連絡して、今の状況を説明。職員から「私の方から病院のソーシャルワーカーに連絡しておきますので、Aさんからも電話してもらえませんか」と、すぐに動いてくれた

・病院のソーシャルワーカーを入れた家族会議を開催。東京のAさんはオンラインで参加。事前準備のおかげで、妹が冷静に話し合いに参加することができ、父親から聞いていた「家族に迷惑をかけない範囲で、穏やかな生活がしたい」という希望を重視

・母親が父嫌の介護で疲れ果てないよう、すぐに退院するのではなくリハビリの様子を見ること、介護保険で利用できる介護サービス体制を構築してから退院すること、を確認し実行することができた

●早めの介護相談が功を奏する理由
 「ウチの親はまだ働いて元気だから」と安心していると、急激な状況変化に対応できず、仕事に大きな影響を及ぼしてしまう可能性があります。まだ何も起きていない段階から、まずは親の住む地域の地域包括支援センターに相談することで、仕事への影響を最小限にするだけでなく、よりよい介護体制づくりにつなげることができるのです。