2022.08.17

親を見守りながらのテレワークを取り止めた理由

2022.08.17

親を見守りながらのテレワークを取り止めた理由

 コロナ感染防止で推奨されているテレワークを使って親を見守りたい、という相談が増えています。親が元気なうちから私に相談したことで、親の見守りのためのテレワークを“取り止めた”方のケースをご紹介します。

●将来の介護に備えて介護相談
 Aさんの母親は70代。父親が亡くなった直後は、かなり気落ちしていましたが、今は一人暮らしにも慣れて、地域の健康体操や趣味のサークルに出かけています。
ところが、コロナで閉じこもりがちの生活が続き、Aさんが久しぶりに帰省すると、母親の歩き方がぎこちなくなっていました。そこでテレワークをしながら母親を見守ろうと、私の介護相談にやってきました。

●見守りが親の依存を引き出す
 Aさんの母親のように、70代にもなれば様々なことがおっくうになります。それでも、一人暮らしならば、自分なりの工夫をしながら生活を維持していきます。ただ、そこに息子が来てくれると「ちょっとあれ取って」「スーパーで買い物してきて」と、つい頼ってしまいます。まだ自分でできていたことも、気づけば、子どものサポート無しでは生活できない状況に陥ります。

●親子関係の悪化
 一方、子どもとしては、元気だった親のイメージを持ちながら関わるので、歩き方がぎこちなくなっている姿を目の当たりにすれば、できるだけ散歩に出かけるよう声をかけなど、母親の生活に口出しをするようになります。母親としては、息子に痛いところを指摘されると「余計なお世話よ!」と感情的に反発して、口喧嘩が増えてしまいます。

●親の見守りにテレワークが有効でない理由
 高齢の方が苦労しながらも自身の力でこなしていくことは、生活リハビリとなって、身体機能の維持につながっていることがたくさんあります。それなのに、親を心配する子が親の生活を厳しく管理しようとするケースが後を絶ちません。結果、親は子に依存、子は親の生活を管理しなければ気が済まない、といった共依存の関係になり、そこから抜け出せなくなります。そのきっかけを、親を見守りながらのテレワークで作ってしまうケースが多発しています。
この実態を知ったAさんから「親が一緒に住んで欲しいと言っても、依存しあう関係になりそうであれば、介護のためにはプラスにならないということでしょうか」と質問を受けました。
私は「同居を希望する親ほど、子どもに依存する傾向が強く、上手くいかないストレスを子どもにぶつけてしまうので、親子関係が崩れてしまうリスクが高いです」と解説しました。すると「見守りながらのテレワークに踏み切る前に、この話を聞くことができて、本当に良かったです」と、Aさんは考え方を改めることとなりました。
 このように、親が元気なうちからの地域包括支援センターなどのプロに相談することで、自分の状況に合わせた今後の介護リスクを知り、それを回避する心構えにつながっていきます。