2022.08.31

要介護高齢者が急増しても、我が子をヤングケアラーにしない方法とは?

2022.08.31

要介護高齢者が急増しても、我が子をヤングケアラーにしない方法とは?

 以前のコラムで「無意識なままに我が子をヤングケアラーに?」として、我が子をヤングケアラーにしないための方法をお伝えいたしました。今回は、日本の人口構造から、より深刻化する可能性のあるヤングケアラー問題とその対応策について解説していきます。

●ヤングケアラーは今後増加するのか?
 今後は高齢者をケアするヤングケアラーが増加するでしょう。理由は、これから要介護状態になる高齢者が急増するためです。
 2025年には、「団塊の世代」800万人全員が75歳以上の後期高齢者となります。また、年代別人口に占める要介護者の割合は、75~79歳で12.7%、80~84歳で26.4%、85歳以上は59.8%(※)で、団塊の世代が介護が必要となりやすい85歳以上の年代に入り、要介護高齢者が急増するのはまだまだこれからなのです。

※厚生労働省「介護給付費等実態統計月報」、総務省「人口推計月報」の各2021年10月データより」(https://www.jili.or.jp/lifeplan/lifesecurity/1118.html

●家族による直接介護がヤングケアラーを生み出す
 認知症の方の特徴的な行動の一つとして、同じものばかり買ってくるケースがあります。たとえば、あなたの母親が認知症になり、子ども(孫)の前で買い物に行くのを止め、ケンカになります。
 子ども(孫)は、親と祖母が言い争う姿は見たくないと、自ら間に入り祖母の見守りをするようになります。進行する認知症の祖母の行動に、時に睡眠時間を削ってまで対応しても、子どもたちは誰にも相談しません。「おばあちゃんの面倒を見てくれてありがとう」と親から感謝され、辛いとも言えません。暗い話題になるので友人にも話せません。「自分は手伝っているだけで、ヤングケアラーというかわいそうな存在と思われたくない」と、さらに孤立を深めていきます。その結果、成績が落ちたり、不登校になったり、その深刻さに周囲が気付いた時には「祖母の世話が唯一の居場所」となり、大切な将来に多大な影響を及ぼします。

●家族だからこそ、適切な介護は難しい
 認知症の母親が同じものばかりを買ってくることには、全く問題ではありません。むしろ、体を動かすことができ、社会とのつながりが維持されることはポジティブに捉えるべきです。ここでの課題は、溜まった古い食品を食べて、体調を崩すこと。これは、ヘルパーさんに確認と管理をお願いすれば解決します。
一人で買い物に出かけるのが心配ならば、段階を追ってGPSを持ってもらうことを検討してもいいでしょう。また、よく行くお店や近所の人に家族から状況を説明し、可能な範囲で見守ってもらうことも有効な方法の一つです。

●笑ってやり過ごせる距離感がヤングケアラー化を防ぐ
 介護をする家族は、「安心安全を確保しなければ」「こうあってもらいたい」といった思いが強くあります。また、自分の不安を解消するために介護してしまう場合もあります。しかし、老いは止められませんし、それに伴って生活が変化するのも仕方がないこと。老いを受け止めるのは、本人も家族も辛いものです。このようなときは、あえて親との距離を保ち、身の回りの世話は介護のプロに任せましょう。家族の介護に関わるときは、全てのことを直視する必要はなく、笑ってやり過ごせる程度の距離感を保ってください。

●介護が必要な高齢者が急増しても、我が子をヤングケアラーにしない方法とは?
 超高齢社会の日本では、介護を必要とする高齢者が急増するのは避けられません。また、核家族化や少子化といった社会の変化に伴い、家族だけでの介護は現実的ではなくなっています。それでもなお、私たちの中には、家族で介護を抱え込もうとしてしまう意識が、根強くはびこっています。その結果生まれるのがヤングケアラーです。適切な距離感を保ちながら、親の老いを受け入れられる気持ちの余裕を持つことが、超高齢社会の日本でも、我が子をヤングケアラーにしない方法です。