2023.03.15

脳梗塞で倒れた父が施設へ入居〜施設での過ごし方と看取りケアまで〜

2023.03.15

脳梗塞で倒れた父が施設へ入居〜施設での過ごし方と看取りケアまで〜

 脳梗塞の後遺症で要介護となったBさんの父親は在宅介護を経て、施設へ入居。今回は施設と家族の信頼関係構築の重要性や面会の頻度、施設での看取りケアについてもお伝えします。

●施設との信頼関係構築の重要性
 希望する施設へ入居したBさんの父親。母親がオンラインの面会時、画面越しの父親の様子に違和感を覚えました。普段は身だしなみに気を遣う父親に寝癖がついていたのです。
面会へ訪れた際は、他の入所者にはスタッフの方が付き添っているのに、父親だけがひとり椅子に座って本を読んでいる様子が気になりました。施設への不信感が募りつつある母親でしたが、施設に伝えることができずにいました。

 自宅で懸命に介護してきた母親がこのような感情を抱くケースは珍しいことではありません。家族の中には介護を人に任せているといった気持ちから、後ろめたさを感じて施設へ本音を伝えられずにいることがあります。また、関係性が悪化すると適切なケアが受けられないのではないかと、言いたいことを我慢してしまうこともあるようです。

●コミュニケーションの積み重ね
 Bさんは母親の悩みを施設のケアマネジャーへ相談をしました。父親の寝癖の件は、前日就寝時間が遅くなり、面会時間ギリギリまで眠っていたためでした。父親がひとりで過ごしていたのは、静かに本を読みたいという本人の希望と、体調が安定して付き添いの必要がないという判断によるものでした。それを聞いてBさんも母親も安心することができました。

 見ている角度や思いから冷静に判断ができず、施設に不信感を抱くことがあります。その多くはコミュニケーション不足が原因の誤解によるものです。普段から施設とコミュニケーションを図ることはとても重要です。

 本人がどんな性格で、どんな生活をしてきたのか、家族が望むケアはどのようなものかなどを施設に伝えておくことが大切です。違和感や不信感を覚えたら、まずは施設長やケアマネジャーへ相談しましょう。

●面会は頻度でも時間でもない
 入居後の面会で大切なのは、回数でも時間でもありません。面会が義務のようになり無理をしてしまっている場合、それはよい面会とはいえないかもしれません。
現在はオンラインでの面会も行われていますので、無理をしない形での時間と頻度を意識してください。面会の際には、施設のスタッフとのコミュニケーションも忘れないようにしましょう。

●看取りケアとは
 看取りケアとは「全国老人福祉施設協議会看取り介護実践フォーラム」によると「近い将来、死が避けられないとされた人に対し、身体的苦痛や精神的苦痛を緩和・軽減するとともに、人生の最期まで尊厳ある生活を支援すること」と定義されています 。
施設により取り組みに違いがあるため、それまで行った具体的なエピソードなどを聞くことでより安心につながるのではないかと思います。

 私自身の体験談ですが、お酒が大好きな方がいらっしゃいました。最期の時、スポンジに少しだけお酒を湿らせ舌へ当てたところ表情に変化があり、家族もそれを見て大変うれしそうにしていらっしゃいました。このような最期の迎え方も、繰り返しのコミュニケーションによる信頼関係が土台にあるからこそできたことです。

●本人の心地よさを中心に考える
 施設へ入居しても、怪我や病気などさまざまなことが起こります。普段から施設と家族が信頼関係を構築できていれば裁判沙汰になるような大きなトラブルに発展することを防げるかもしれません。関わるスタッフと家族がチームとなり、本人が心地よく毎日を過ごしているか。それを軸にしてつながっていることが何よりも大切であり、本人の最期の時を豊かにするのではないでしょうか。