2023.06.21

親の免許返納でトラブルを回避するために

2023.06.21

親の免許返納でトラブルを回避するために

 介護相談でも、親の免許返納に関するご相談が多く持ち込まれています。実際にあったトラブル事例と、親の免許返納との向き合い方について、お伝えさせていただきます。

●ケース1:家族で返納するように説得➡感情的な衝突となりさらに頑なに
 娘さんが「お父さんも75歳を超えたし、免許返納を考えてみたら?」と声をかけたところ、父親は「まだ大丈夫」と聞き流していました。母親や兄弟、叔父も説得しましたが、免許の話をすると「うるさい!」と感情的になるようになってしまいました。

●ケース2:運転の失敗を指摘➡関係が険悪になり、日常的にケンカが増える
 実家に帰省した息子さんを父親が駅まで迎えに来てくれました。父親の運転の仕方が緩慢に感じて心配になり、「なんで今のタイミングで右折しないの?」と、強く注意したところ「余計な口出しするな!」と険悪なムードになってしまいました。その他のことまで険悪になり、息子さんが父親に電話をしても、出てくれなくなってしまいました。

●ケース3:車や鍵を取り上げる➡運転への執着がさらに強くなり、他人の車のドアを開けようとする
 物忘れが目立つ母親に、車の運転だけでも辞めてもらおうと懸命に説得するも「もう放っておいて!」と感情的に言い返されてしまいました。後ろめたい気持ちがありながらも、不安が大きくなり、車の鍵を隠すことに。母親は「あんたが鍵を持って行ったんだろう!」と電話で訴えてくるようになりました。仕事中もかかってくるので「うるさい!」と電話を切ることが増えてきました。ある日、中古車販売店から「お宅のお母さんがウチの車にいたずらして困る」と連絡が入るようになってしまいました。

●ケース4:“もう2度と車を運転しない”と紙に書かせる➡納得しても運転を続ける
 同居する娘さんが母親に「そろそろ運転辞めたら?」というと「そうね」と素直に応じるものの、1週間もするとまた車で出かけてしまいます。娘さんが「約束を忘れないように、紙に書いて欲しい」と提案し、母親に“もう2度と車を運転しません”と書かせました。しかし、1週間もするとやはり運転してしまう母親に、娘さんは途方に暮れてしまいました。

●家族で衝突する前に相談
 「父(母)が誰かをケガさせる事故を起こしたら大変だ」という不安な気持ちから、親に免許返納を迫ると、上手くいかないケースが殆どです。重要なのは、親にとって安心して暮らし続けるために、運転免許返納も選択肢の一つとして提示することです。
家族だと、気遣いのない言葉が口をついて出てきてしまい、先述のトラブル事例のようにこじれてしまうものです。地域ごとに用意されている免許返納した際に受けられる特典を調べて伝えたり、「これまで、免許の返納について考えたことあるの?」などと聞いて本人の意向を確認するぐらいから、徐々に話を始めてみてください。