2023.07.26

親の移動手段に心配や不安を感じたとき

2023.07.26

親の移動手段に心配や不安を感じたとき

 高齢者が起こす運転事故のニュースを目にするたびに、自分の親の顔を思い浮かべ不安に感じる方も多いのではないでしょうか? 免許返納を勧めたくなりますが、それがきっかけで家族間がギクシャクしてしまうケースもあります。
今回は親の免許返納を例に、離れて暮らす親の移動手段をサポートする方法をお伝えしていきます。

●本当に必要なサポートを考える
 親の免許返納で家族関係を悪化させてしまう原因の一つに、価値観の不一致があります。

例えば、離島で暮らす高齢の母親は、日々の買い物や通院など、毎日のように車の運転をしています。都心に住む息子は、母親を心配して、免許返納と利便性の高い自分の住む地域への引越しを勧めます。

ただ、それは本当に母親のためになるのでしょうか? 生まれ育ち慣れ親しんだ地域で、問題なくひとり暮らしをしてきた母親にとって、引越しはとても大きな環境の変化になります。

不便な地域ゆえに車の運転が必要でしたが、車はひとりで行きたい場所へいくことのできる社会と繋がるツールでもありました。高齢の親を心配して、不安の芽を摘んでおきたくなるのは家族なら当然です。ですが、説得する前に何が本人にとって必要なサポートなのかを考えてみましょう。

●対立しない対話を
 警視庁の運転免許証の自主返納に関するアンケート結果から、7割の高齢者が自主返納をためらう理由に「車がないと生活が不便」ということを挙げています(「刻々と変化する交通情勢に即応するための交通安全対策に関する調査研究」より)。

中には、運転が「生きがい」や「趣味」という人や自主返納によって受けられるサービスや特典を知らない人がいます。こちらの不安感を優先せず、まずは「対話」をすることが大切です。親がこの先どんな生活を望んでいるのか、家族もどんなサポートなら無理なくできるのかを改めて考えてみましょう。

一方で「対話」が難しい親子関係もあります。疎遠であったり、聞いたとしても答えてくれない場合も。その場合は、無理をして聞き出す必要はありません。ご自身が無理せず疲れない方法と距離感で続けられるサポートを考えてみましょう。

●選択肢は意外と多い
 どんな場合でも、親が困った時のためにと事前に対策を考えておくことはできます。具体的には、危険運転を遠隔地に発信できるドライブレコーダーを取り入れたり、衝突被害軽減ブレーキなど安全運転を支援してくれるサポカーに乗り換えることもおすすめします。
交通機関で高齢者サービスが受けられるか、買い物はネットや食事の宅配業者を利用したり、往診してくれる医療機関を探すこともできます。

●本当の課題とは
 選択肢がいろいろあるのに、親のことだと冷静に判断ができないケースが多くあります。介護を含め、親のサポートには何がベストなのか冷静に見極め、心配や不安な感情と切り分け考えていくことが大切です。そのためには、ひとりで抱え込まず地域包括支援センターなどの公的な機関や、人との対話が必要だと感じています。