2023.08.30

親の介護とともに自身の老後を考えてみよう(後編)

2023.08.30

親の介護とともに自身の老後を考えてみよう(後編)

 前回に続き、親の介護について考えることから一旦離れ、いつかやってくる自身の老後や介護に目を向けてみましょう。自分の老後や介護について考えると、不思議と親の介護についても視点が変わって、気持ちが楽になることも多いからです。

●息子と一緒に相談にやってきた母親へ伝えたこと
 前回、夫の介護を終えた母親が大柄の夫の介護で苦労したことなどから、自身が望む介護よりも自身が要介護状態になったときにペルパーなど介護してくれる人に対する心配ばかりを口にしていたことを紹介しました。
 そんな母親に私は「まずはご自身のことを一番に考えていただきたい」と伝えました。それは、介護の仕事に携わる人間は、要介護状態になってもその人がその人らしく生きていくことを支えたいと願い、その人らしさに触れて共感できることにやりがいを感じるからです。

●自分自身にとって豊かな老後とは
 長い人生を生きてきた先、自分らしく生きることを許される社会であってほしい、と私は願っています。自分自身にとって、本当に豊かな老後について考えた時、親の介護のあり方も変わって見えてくるのではないでしょうか。
 本当に豊かな老後とは、私は老いる身体と上手に向き合うことなのではないかと感じます。
「健康で長生きすることのみを目的とすることが本当に幸せなのでしょうか?」
「誰にも迷惑をかけないで生きていくことはできるのでしょうか?」

たとえ、老後に有り余るお金を持っていても、高価な老人ホームに入所しても、幸せな老後を過ごしているとは言えない人がいます。

●要介護となったときに試されること
 介護の仕事に携わって、私は様々な方の多種多様な生き方を見てきました。その中で、自分自身に正直で、自分らしく自由に生きていらっしゃる方はとても楽しそうでした。経済的に裕福でなくても、決して恵まれた環境下でなく一人で過ごされていても例外ではないのです。過去にそれを証明してくださる方々に出逢ってきました。
介護というものに向き合わなければならない時、「本当に自分はどうしたいのか?」「どんな生き方をしたいのか?」が試されるのだと思います。親の介護に対策を打つだけでなく、自身の老後や介護についても、同時に考えていただければ、本質的な検討ができると思います。