2026.01.29

親の転倒や骨折と向き合うために必要な心構え

2026.01.29

親の転倒や骨折と向き合うために必要な心構え

 歳を重ねると、筋力や視力の低下、バランス感覚の衰えなどにより、些細なことが転倒につながることもあります。転倒が原因で骨折や頭部の打撲を起こし、入院を余儀なくされ、介護が必要になるケースも少なくありません。高齢の親の転倒は、家族にとって大きな心配の種といえるでしょう。今回は、高齢の親の転倒について、「予防策はあるのか」、そして「どのような心構えが必要なのか」をお伝えします。

●転倒のリスクを知る
 消費者庁の調査によると、75歳以上の後期高齢者が自宅で転倒する事故は、65歳以上の前期高齢者に比べて約2.2倍にも増えています。転倒によるケガの部位は「頭」「顔・首」だけでなく、「脚」や「手首の骨折」も多く見られます。骨折をした場合、その8割以上が入院を必要としているのが現状です。
 転倒事故が多く発生する場所は、「浴室・脱衣所」「庭・駐車場」「ベッド・布団周辺」「玄関・勝手口」「階段」など。原因としては、「つまずく」「足を滑らせる・引っかける」「バランスを崩す」「膝折れする」など、日常のあらゆる動作に潜んでいます。
 高齢の親が一人暮らしをしていると心配になるものですが、もはや高齢者の転倒は「いつ」「誰にでも」起こり得るものだという認識が大切です。

●「転ばせない介護」が最善とは限らない
 介護職員の研修では、「利用者を転倒させないことが、必ずしも良い介護ではない」と学びます。なぜなら、「転ばせないこと」を最優先にすると、要介護者の行動を過度に制限してしまう恐れがあるからです。
 1980年代の日本の介護現場では、転倒防止や徘徊予防の名のもとに身体拘束が一般的に行われていました。当時は「安全のために仕方がない」と考えられていたものの、そこには「尊厳」や「自立支援」といった今日の介護の理念が十分に浸透していませんでした。
 家族介護も同じで、転倒を恐れるあまり親の行動を制限すると、本人の尊厳を奪う結果になりかねません。
 もちろん、段差をなくす・手すりをつけるなどの住環境の見直しや、筋力低下を防ぐための軽い運動の促しは有効です。それでも転倒を「完全に防ぐ」ことはできません。その現実を、家族として心に留めておくことが大切です。

●「転ぶ権利」を保障するという考え方
 親に何度注意しても「2階のベランダに自分で洗濯物を干したい」と言い張るかもしれません。そんなとき、「危ないからやめて」と強く制止するよりも、その人の「自分でやりたい」という気持ちを尊重することも大切です。
 多少のリスクや時間がかかっても、「自分の手や足を使って生活したい」という意欲は、その人らしい生活の質(QOL)を保つ上で欠かせません。体が思うように動かなくなり、できていたことができなくなる不安や悔しさを一番感じているのは、他でもない親自身です。
 親が老いと向き合う姿を見守るには、「ケガをしても仕方ない」と受け止められる心の余裕が必要です。元気だった親が日々衰えていく姿を見るのはつらいものですが、過剰に心配しすぎず、適度な距離を保ちながら、最後まで良好な関係を続けることこそが、何よりの親孝行ではないでしょうか。