2026.03.11

2割負担拡大の先に見える“老いとの付き合い方”

2026.03.11

2割負担拡大の先に見える“老いとの付き合い方”

 新政権が発足し支持率が高いうちは、これまで先送りされてきた「国民負担の見直し」に踏み込む政策が実行されやすくなります。介護保険サービス利用料の2割負担の対象者の拡大もその一つです。そこで、今回施行される可能性がある負担増の解説と、超高齢社会と上手に向き合う方法についてお伝えします。

●2割負担の対象者拡大の背景
 2000年4月に施行された公的介護保険は、それまで家族が担ってきた介護を社会全体で支えていく「介護の社会化」を目的としており、将来の介護に備えて無理のない範囲で保険料を納めておくことで、無理のない費用負担で介護サービスを受けられる制度です。介護サービスは原則1割負担で利用できますが、要介護者が所属する世帯年収が280万円以上は2割、現役並みの340万円以上となると3割負担となっています。

■介護保険制度の仕組みと負担割合

 

対象者

3割負担

年収340万円以上(3.6%)

2割負担

年収280万円以上(4.6%)

1割負担

年収280万円未満(91.8%)

※65歳以上の単身者の場合で、年収は年金収入を含む。厚生労働省資料(P59)より作成。  

 上の図では、9割の方が1割負担となっていますが、280万円以上となっている2割負担の条件金額を引き下げ、対象を拡大することが予測されています。利用者が2割負担となれば、介護保険財政からの負担は8割で済むため、制度全体としては支出を抑えられる仕組みです。

●自治体ごとの保険料の違いと背景


厚労省資料より作成

 介護保険財政は、半分は国民が支払う保険料で、残りの半分を税金で賄っています。全国平均の介護保険料は右肩上がりで上昇しており、介護保険施行当時は2,911円でしたが、現在は6,225円となっています。この財政は市区町村ごとに管理されており、市区町村ごとに保険料が変動しています。

 月額の介護保険料が最も高いのは大阪府大阪市で9,249円、最も低いのは東京都小笠原村で3,374円です。介護サービスが充実し、多くサービス利用されている自治体では介護保険料が高額となります。介護保険料の値上がり抑制を図るために、自治体ごとの実情に合わせた介護予防の施策が行われており、地域包括支援センターがよろず相談窓口を担い、地域の健康体操につなげているのも、その取り組みの一つといえます。

<高額介護サービス費>

厚労省資料より作成

 公的介護保険によるサービスであるため、介護サービスにより生活苦に陥らないよう、「高額介護サービス費」により負担の上限金額が定められています。今回の改正で2割負担の対象となっても、単純に負担額が2倍になるわけではありません。

●一人の市民として考えるべきこと

 制度の持続性と並んで、多くの方が心配しているのが「介護職の人手不足」です。厚生労働省が発表した「第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」によれば、2040年には272万人が必要とされ、現状からは57万人増やさなければなりません。社会保障費がひっ迫する中で、介護職の給与を2倍にするような処遇改善を行うために、急激な負担増を強いることも難しいでしょう。

 ただ、私たち一人ひとりにも、介護人材不足に対してできることがあります。それは、親が元気なうちから地域包括支援センターとつながっておくことです。早い段階から家族介護を身近に捉える機会を持つことで、老いを受け入れる心構えができます。老いてできなくなることが増えるのは当然だと思えていれば、高齢者の自立を支援する介護職と衝突することを防ぐことができます。目を離したから転倒したのだろうとクレームを入れたくなる気持ちはわかりますが、転倒しないよう行動を制限することは高齢者の尊厳をおろそかにすることになります。そうした理解と関わり方が、想いを持って働く介護職を守ることにもつながります。

 また、ぎりぎりまで自宅介護をしていた家族が介護疲れで救急搬送され、緊急ショートステイで受け入れた認知症の高齢者は、大変な混乱を起こしていることがほとんどで、その対応をする介護職はかなり疲弊してしまいます。家族で介護を抱え込まず、最初から地域包括支援センターに相談していれば、介護職への負担軽減につながります。

 2割負担拡大も、制度維持に効果がありますが、介護職不足を改善するほどの大きな効果は期待できないでしょう。今回の改正を、超高齢社会の中で家族介護と向き合う機会と捉えていただきたいと思います。 “まずは地域包括支援センターに一度電話してみる”―そんな小さな一歩が、家族介護とのよりよい向き合い方につながります。社会全体で支え合う視点を持てば、超高齢社会も決して悲観するだけのものではありません。